Vol.67 バイアグラで物が青く見える

ED治療薬の副作用で「視覚障害」というものがあります。バイアグラをはじめとするED治療薬(PDE5阻害薬)が引き起こす「視覚障害」とは一般的に青視感、羞明感と呼ばれるもので、物が青紫色に見えたり、蛍光灯などがチカチカ、キラキラして見えるという症状です。ペニスの血管を拡張させる作用のバイアグラが、なぜ目に作用して物を青紫色に見せるのか、関連性がみえず、一見不可解な感を抱きます。当院でも以前に「バイアグラは青い錠剤だから、飲むと物が青く見える」とおっしゃっていた患者様がおられました。原因がわからないと迷信がはびこる温床になりますので、今回はこの「視覚障害」の副作用について解説したいと思います。
視覚障害の副作用が生じるメカニズムを説明するために、まず、ED治療薬の作用メカニズムをおさらいしましょう。バイアグラなどのPDE5阻害薬は生体内でcGMPの分解を行なう5型ホスホジエステラーゼ (PDE5) の酵素活性を邪魔します。それによって血管拡張作用をもつcGMPが体中で増えて、ペニスの血管をはじめとして、生体内のさまざまな部分の血管が拡張します。PDE5は特にペニスの血管平滑筋に多く分布しているため、バイアグラなどのPDE5阻害薬は特にペニスの血管に強く効果を発揮しますが、一方でペニス以外の血管を拡張させてしまうことによってバイアグラの副作用の多くは引き起こされます。結膜の血管が拡張すると「目の充血」、顔面の血管が拡張すると「顔のほてり」、脳の血管が拡張すると「のぼせ、頭痛」となるのが、その例です。
ところが、物が青く見える「視覚障害」の副作用は血管拡張とは全く異なるメカニズムで引き起こされます。目の網膜にはPDE5はほとんど存在しませんが、良く似たPDE6という酵素が存在します。PDE6は網膜の視細胞(錐体細胞)に多く含まれ、目が光を受けたことを脳に伝える重要な役割を果たしています。網膜にはPDE5が存在しないのですから、本来ならばPDE5阻害薬であるバイアグラが作用するはずがないのですが、実際にはバイアグラはPDE5だけでなく、ほかのPDE1~PDE11もある程度邪魔してしまうのです。(ちなみに狙ったPDE5以外に効いてしまうことを「標的特異性が低い」といいます)バイアグラが網膜のPDE6に作用する割合はPDE5に作用する本来の薬効の10分の1程度と言われています。ちなみ「視覚障害」を起こしにくいシアリスではPDE6に作用する割合が小さく、本来の薬効の200分の1程度です。
PDE5以外にも効いてしまうというバイアグラの副次作用の中で、特に問題となるものとしてはPDE6を阻害することによる網膜への影響、PDE1を阻害することによる血圧低下作用、PDE3を阻害することによる強心作用、などが挙げられます。
視覚障害は特にバイアグラで多くみられる副作用で、レビトラやシアリスではほとんど見られません。性行為の前後に自動車の運転等される方の中で、バイアグラで目がチカチカする視覚障害の副作用があらわれてしまう場合は、安全のためにレビトラやシアリスをお試しになることをお勧めします。