Vol.10 偽造ED治療薬にご注意ください

ネットショッピングは今や本邦において4兆円を超える市場規模といわれています。ボタン一つでなんでも買える大変便利なネットショッピングですが、こと処方医薬品の購入に関しては、偽造医薬品による死亡例も多数報告される、危険な側面も併せ持っています。

WHO(世界保健機関)の調べでは、インターネットなどを使って不法に販売されている医薬品のおおよそ半数がニセモノで、健康被害により毎年、全世界で数十万人が死亡していると報告しています。この調査結果はイギリスの医薬品局が割り出したネットショッピングの偽造医薬品率62%という報告や、ファイザー製薬、バイエル製薬、イーライリリー社、日本新薬が合同で行ったED治療薬に関する偽造医薬品四社合同調査の偽造医薬品率55.4%という結果ともおおむね一致しています。
海外から正規の流通経路以外で輸入されてくる医薬品の約半数がニセモノであった場合、その中から確実に本物の医薬品だけを選び出すのは至難のわざと言ってよいでしょう。海外に一歩出れば、日本の医薬品常識(安全・品質・流通の管理水準)やモラルは全く通用しないといっても過言ではありません。

過去に偽造バイアグラに含まれている成分を調査した研究があります。全く有効成分が含まれていないものから、2倍以上含まれているものまで、さまざまだったそうです。
Stecher VJ, Jackson G, Banks I, Arver S. Analysis of Pharmaceuticals Seized by Authorities for Suspicion of Being Counterfeit Viagra (Sildenafil Citrate). Lyon, France: European Society for Sexual Medicine, 2009.

薬効成分が全く含まれていないものが効かないことは明らかですし、2倍以上含まれているものは、一日の上限量を大幅に上回っており、強い副作用から重篤な後遺症を引き起こす可能性があり、命を落とす危険すらあります。また、不衛生な密造工場で製造されているため、ねずみや昆虫の死骸、工業用ペンキ、プリンター用インク、覚醒剤(覚醒剤密造工場と兼用していたため、覚醒剤の成分であるアンフェタミンが含まれていた錠剤も発見されています)といった不純物が含まれている事例も報告されています。
また、ネットショッピングで購入する隠れたリスクとして、医師の診察を受けずに服薬するため、本来、診察時に発見できたはずの、糖尿病や高血圧、狭心症、心筋梗塞といった病気が見逃され、ED治療薬の副作用と相まって、致死的な発作(いわゆる腹上死)を引き起こしてしまうことがあります。
実際の死亡例としては、2008年2~5月にシンガポールにおいて、血糖降下薬グリベンクラミドが含まれていた偽造シアリスやその他の漢方薬(いわゆる精力剤)を服用した複数の男性が低血糖による昏睡などの重篤な症状を呈した事件があります。確認患者数40人、疑いのある患者87人のうち7人が意識障害を起こし、4人が死亡しました。血糖降下薬グリベンクリミドが43㎎含まれていたことによる低血糖が原因でした。(グリベンクラミドの1日最高服用量は10㎎)
偽造医薬品を購入することによるリスクは上記のように、多岐にわたります。ED治療薬をお求めの際は、かならず医師の診察を受けるようにしてください。

偽造ED治療薬(偽造バイアグラ、偽造シアリス、偽造レビトラ)の見分け方について詳しく書かれたサイトを見かけます。親切心でサイトを立ち上げているのだと思いますが、薬の真贋をあの手この手で推測するのには、やはり限界があり、有害なニセモノを完全にはより分けられません。偽造医薬品業者も簡単に見破られないように日進月歩、策を弄しているわけですから、これらのサイトは不本意にも、悪質な偽造医薬品業者とのいたちごっこにED患者を巻き込んでいるようにも思えます。どうしても病院やクリニックを受診できず、個人輸入に頼らざるを得ない方にとってはありがたい情報なのかもしれませんが、偽造ED治療薬による健康被害を避ける方法は、最終的には購入しないこと以外にないのですから、あまりこういったサイトの頼るのはお薦めできません。

ちなみに偽造バイアグラ、偽造シアリス、偽造レビトラは、米国経由で日本に輸入される事例も確認されており、日本の住所から発送された事例もございます。先進国や国内から送られてくるからといって決して安心はできません。くれぐれもご注意ください。