EDの原因の一つに交感神経が関係している社会的ストレスがあることは説明しましたが、もう一つ大事なものがあります。それは「酸化ストレス」です。なんだか名前は悪そうですが、実際どう悪さをするのかはっきりしませんね。
酸化とは分子が電子を放出する反応、還元とは電子を受け取る反応と化学では定義されています。わかりやすく言うと、金属が錆びたり、古い油が茶色になったりするのは酸化反応です。
なんだか、そう聞くと体に悪そうですが、実は人間は体の中でエネルギーを作るため、日常的に酸素を使って酸化を行っています。ただし、過度の運動や運動不足、喫煙、偏った食事、メタボリックシンドロームなどは体の中で「活性酸素」という強力な酸化物質を余計に作ってしまい、体内が過度に酸化側に傾いてしまいます。この状態を「酸化ストレス」といいます。
酸化ストレスは血管や神経を傷害して一酸化窒素(Ntitric oxide: NO)の産生を抑制します。NOについては別の機会でお話ししますが、NOの減少は動脈硬化の原因となり、かつ血管が広がりにくくなります。そのため、陰茎の血流も減ってしまい勃起しにくくなる、つまりEDになりやすくなります。こうなってくると精神的ストレスを減らしてもEDの改善は見込めません。では、このような場合はどうすればいいのでしょうか?酸化ストレスを減らすこと、つまり禁煙や適度な運動、食事内容の改善などはED改善に作用するといえます。あとは直接NOを増やすことができればいいはずですね。バイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED治療薬はPDE5阻害薬といって血管のNO産生を増やしEDを改善します。
ちなみにNOを発見したF・ムラド、R・F・ファーチゴット、L・イグナロは1992年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。NOの発見によって、バイアグラの開発も進み、この20年足らずの間でED治療は劇的に進歩しました。実際に、バイアグラが発売される前は、EDに対してあまり有効な治療はなかったのが現状です。改めて受賞者の3人に感謝ですね。ちなみに、私の大学院の卒業論文もNOに関するものでしたので、そういった意味でも3人に感謝してます(笑)。
今後、ED治療がより身近なものになってくると思いますし、そのお手伝いをしていければと思ってます。NOはED以外でもいろいろな医療分野で活用されていますので、その話もいずれしたいと思います!