前回のコラムでは週刊現代の記者に「若年性ED」についての取材を受けたことをきっかけに、若年性EDについてのお話をしました。
≫Vol.35 週刊現代の若年性EDに関する取材
記事では近年、若年性EDが増加傾向にあるのではないかと推測していましたが、結論から言いますと、若年性ED患者は増加しているのはほぼ間違いありません。理由のひとつにはED患者全体が増加していることが挙げられます。これはバイアグラ、シアリス、レビトラといったED治療薬が周知されてきたことやED治療の専門クリニックが増加し、治療が受けやすくなったことによって、いままでEDの診断・治療を受けられなかった方が患者として治療を受けられるようになったことが挙げられます。結果的に、いままで見過ごされてきた若年性EDにも治療の門戸が開かれました。
もうひとつの要因としては若年者のうつ病患者の増加が挙げられます。
若年性EDの原因についての過去の調査で20~30代のED患者のほとんどが、
(1)仕事のストレスや過労、パートナーとの対人関係などが原因の心因性ED
(2)うつ病や抑うつ状態、統合失調症などが原因の精神病性ED
(3)精神安定剤や抗うつ剤の副作用やアルコール依存などによる薬物性ED
のいずれかであると報告されています。このうち、うつ病やその治療にともなう精神安定剤、抗うつ剤の処方が2000年以降、急激に増加しています。
(うつ病患者数44万人→104万人、抗うつ薬の売上高170億円→900億円)
加えて、それまで抗うつ薬の主役であった三環系抗うつ薬にかわって、副作用が少なく処方しやすい等の理由で、EDや射精障害を起こしやすいパロキセチン(パキシル錠)が多く処方されるようになりました。結果として、うつ病による精神病性ED、抗うつ薬による薬物性EDが増加していることは間違いありません。
長引く不況により実際に若年者のうつ病が増加していることに加え、「うつ病は病院で薬をもらって治療するものだ」という啓発運動や、EDを引き起こしやすいパロキセチン(パキシル)の普及で若年性EDは全体としては、かなり増加していることが考えられます。
今後の全国的なED発病率に関する調査に注視する必要がありそうです。