不妊症は女性にとって深刻な悩みであることは言うまでもありません。特に女性が原因と考えられるケースでは、そのストレス、治療の体への負担、費用などは大変なものです。不妊症には、男性側に問題がある男性不妊も当然あります。今回は、不妊症とEDの関係について話をしたいと思います。
当院には、いろいろな原因でEDの症状を訴える患者さんが来ます。年齢によるED、糖尿病や高血圧、心因性などなど…。
それらの中で、少し気になるケースがあります。それは、子供を作ろうと思い始めたらEDになったという場合です。子供を作るために奥さんに性行為のスケジュールを指定され始めた途端に、今までなかったEDの症状が出始めたというのです。排卵の時期などを考えるとやむを得ないのですが、仕事で疲れていたり、絶対に失敗できないというプレッシャーなども重なり、EDになってしまうことがあるようです。
特に不妊症で悩んでいるわけではなくても、このような症状がでるわけですから、不妊の患者さんはさらに強いストレスを受けそうですね。
実際に、不妊症の検査を受ける前は性機能に問題がなかった男性405人のうち11%が精液検査後に勃起または射精の障害を訴えたという報告(1)があります。
また、不妊検査に訪れた302人の男性を調べたところ28%がEDだったという報告(2)もあるので、不妊症を治療する医師はEDの可能性を常に疑うことが、ED治療ガイドライン上でも指摘されています。
このような広い意味での心因性EDでもED治療薬はよく効きますので、まずは使ってみてもいいでしょう。ちなみにバイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED治療薬は妊娠に悪影響を及ぼすことはないので、安心して使用できます。なんにせよ、不妊症は男性にとってもナーバスな問題であることが、以上のことからもわかりますね。
参考文献
(1) Saleh RA, Ranga GM, Raina R, Nelson DR, Agarwal A. Sexual dysfunction in men undergoing infertility evaluation: a cohort observational study. Fertil Steril. 2003 Apr;79(4):909-12.
(2) O’Brien JH, Lazarou S, Deane L, Jarvi K, Zini A. Erectile dysfunction and andropause symptoms in infertile men. J Urol. 2005 Nov;174(5):1932-4; discussion 1934.