Vol.97 バイアグラの重症心不全への有効性

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Sildenafil(バイアグラ)は一酸化窒素(Nitric oxide:NO)を作り出して肺血管抵抗を下げることが知られています。肺血管が固くなって心臓から肺へ血液がいきわたりにくくなる病気を肺高血圧症といいますが、その治療薬としてバイアグラの成分であるSildenafilは使用されています(以降は分かりやすくするためにSildenafil=バイアグラとします)。心臓の左と右の部屋の間に穴ができて血液が通ることをシャントといいますが、通常は左の方が右よりも血圧が高いために左から右へ流れるます。これを放置しておくとシャントが逆に右から左になることがあり、アイゼンメンジャー症候群:Eisenmenger’s syndromと呼ばれて手術することができなくなり、非常に危機的な病態になります。
これは肺高血圧が原因であるためバイアグラが治療に用いられるわけです。
Impact of Sildenafil on Survival of Patients With Eisenmenger Syndrome.という論文ではバイアグラがアイゼンメンジャー症候群の患者の予後に良い影響を与えたということが発表されています。データの集め方は論文としてはベストな方法ではありませんが、それなりの数のアイゼンメンジャー症候群に対してのデータなのである程度の評価はしていいと思います。
121人のアイゼンメンジャー症候群患者を対象に調べたところ、バイアグラを使っている患者さんは6分間歩行の距離や血行動態が改善したということです。1年と3年での生存率を比べたところバイアグラを使っている人たちは97.0%と95.2%で、使わなかった人たちは90.6%と89.2%だったとのことです。
もとからの心不全の度合いや、肺動脈圧の高さなども生存率には関係していたようですが、それぞれが独立した要素だったそうです。
バイアグラは心臓に悪いんじゃないかと心配される方はいまだに多いようですが、またひとつ心配を取り除くような良いデータが得られました。
今後もいろいろなデータや論文を取り上げていきたいと思います。

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