Vol.84 陰茎リハビリテーションについて

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前立腺癌手術後にEDになることがあるという話は、以前のコラムでもしております。その原因としては陰茎海綿体の線維化が考えられています。陰茎リハビリテーションとは海綿体の線維化を予防して術後のEDからできるだけ早く回復するために行うものです。
具体的には、陰茎リハビリテーションは根治的前立腺癌手術後の勃起機能低下を改善させるために薬剤や医療機器をしようすることと定義されています。海外では術後ケアとして既に重要視されていますが、日本では知名度はいまひとつかもしれません…。ちなみに陰茎リハビリテーションに対して日本で健康保険は使えません。
主なリハビリツールとしては
1)陰圧式勃起補助具
2)プロスタグランジンE1(PGE1)の陰茎海綿体注射(intracavernous injection:ICI)
3)バイアグラなどのPDE5阻害薬内服
が挙げられます。
陰圧式勃起補助具は、陰茎周囲の陰圧により陰茎に血液を集め勃起状態を誘発するというものです。また、ICIはPGE1という強力な血管拡張作用を持つ薬剤を陰茎に直接注射して勃起を引き起こします。バイアグラなどのPDE5阻害薬については言わずもがなでしょう。
陰圧式勃起補助器具もICIも有効性は限定的ながら認められていますが、小規模な研究しかないので、もう少し大規模な研究結果が待たれます。
ちなみに以前はバイアグラ、レビトラ、シアリスなどのPDE5阻害薬は単独でも前立腺癌術後の性機能回復に有効という報告がなされていましたが、2008年に最大規模の臨床研究が行われた結果、レビトラ単独の陰茎リハビリテーションへの有効性が否定されてしまいました。結果として、PDE5阻害薬の陰茎リハビリテーションへの評価はヒトでは不明という扱いになっています。ただ、この臨床研究はやや問題点を指摘されているため、研究デザインがしっかりした方法で行えば別の結果が出るかもしれません。
まだまだ、日本では知名度も実績も不十分な陰茎リハビリテーションですが、術後の性機能の温存、回復はその後の生活の質に大きな影響を与えるので今後も新しいエビデンスに注目する必要がありそうです。

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